バッテリー

コンデンサは二枚の金属板を誘電体(絶縁体)を挟んで金属板に±の電荷を蓄えます。電解コンデンサは金属板表面を化学処理することで誘電体の薄膜を形成したものです。大きな容量が得られます。
リチウムイオンポリマー電池(リポバッテリー)は同じような構造ですが,間に電解質を挟みます。金属と電解質の化学反応を利用して大量の電気を蓄えます。正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充電や放電しています。
コンデンサ(kondensator)はドイツ語です。英語でコンデンサ(condenser)と言った場合,気体を凝縮して液体にする装置(凝縮器)のことです。英語ではキャパシタ(capacitor)といいます。
コンデンサ(キャパシタ)やバッテリーの蓄えることのできる電気量を容量(Capacity)といいます。両方で単位が異なります。

容量と電圧

リポバッテリー  動力用バッテリーはリチュウムイオンポリマー電池(リポバッテリー)が主流です。というよりこれしかないと言えるでしょう。  バッテリーの容量(蓄える電気量)は電流×時間(mAh)で表されます。たとえば,1,000mAHの容量は1,000mA(1A) の電流で1時間流せるという意味です。当然500mAでは2時間,2,000mAでは 0.5時間です。  他にも電気量の単位はC(クーロンCoulomb)があります。1Aは毎秒通過する電気量が1Cですから,1Aの電流で3,600s(1時間)の電気量は3,600C(クーロン)です。つまり1,000mAHのバッテリーは3,600C(クーロン)の電気量を蓄えるという意味です。

 リチウムイオンバッテリーとリチウムポリマーバッテリー(リポバッテリー)の基本的な構造は一緒です。違いはリチウムイオンバッテリーでは電解質に液体を利用し,リポバッテリーは導電性のポリマーを利用しているのが大きな違いです。リポバッテリーの方が高価ですが軽いという特徴があります。

1C充電~何と読むの  ところで「1C(Capacity)充電」というのは「1時間かけて放電するときの電流で充電する」と言う意味で,電気量の単位C(クーロン)とは別物です。こちらはCレート(rate)と言います。  実に紛らわしく,特に物理を学習した人にとっては余計意味不明だったのではないかと思います。同じCでもCapacityのCとCoulombのCで読み方が違います。 「1C充電」は「イチキャパシティ」であって「イチクーロン」とは読みません。あるいは「イチシ―」と読むべきです。  この区別が分かれば3,000mAHのバッテリーの「1C(キャパシティ)充電」は3Aで充電するという意味だと分かります。  1C(キャパシティ)充電の場合,残量0%のとき満充電まで1時間かかることになります。  また,放電に関しても,20Cとあるのは「20CのCレートで放電可能」という意味で,2,000mAhのバッテリーの場合40Aと言うのが分かります。

セル電圧と電流  リチュウムイオン電池の1セルについての使用可能な電圧範囲は2.7~4.2Vです。セルの電圧が2.7V未満になると過放電領域となり,充電ができなくなります。安全を考えて3.2Vを下回らないように使う必要があります。また,4.2Vを超えると過充電となり危険です。  この電圧の変動は蓄えている電気量によります。

セル電圧と電流

&emsp100~50%と50%~0%の電力(取り出せる電気量)は異なります。50%~0%では減少します。

 電圧と残量はほぼ直線的に変化しているので電圧を測定すれば残量は分かります。安全のために4.2Vで100%,3.2Vで0%とすれば残量%は    残量=(現在の電圧-3.2)×100 %  となります。2セルならば測定電圧を1/2にして「現在の電圧」として計算すればいいわけです。  モーターの性能などを表すとき,7.4Vとか11.2Vとか表記が在りますが,1セル当たり3.7Vですから,50%充電時の電圧となります。  ハイペリオンなどセルバランスのしっかりとれたバッテリーはバランスコネクターの無いものもあります。  そもそもバッテリーの電圧が下がると飛ばしていてパワーがなくなってきますし,ESCのカットオフ機能でバッテリーは保護されるので,保管時以外は気にする必要は無いように思います。  余談ですが,電動自転車をよく使っています。残量が少なくなると上り坂では本当にきつくなります。

何Vを0%にするかは充電器やバッテリーチェッカーのメーカーによって異なっているようです。したがって使った機器により残量は異なるようです。

容量と重さ  リチウムイオンバッテリーの容量は1gあたり約50mAh程度です。1セルが3.7Vなので,例えば11.1V1,100mAhのバッテリーの重さは   1,100÷50=22g  3個直列にすると   22×3=66g です。  アペックス テクノロジー ジャパン株式会社のデータです。メーカーや性能により異なります。

容量と重さ

 これにコネクター類や被覆などの重さが加わります。  実際の重さは

ハイペリオンG511.1V1,100mAh89g
ハイペリオンG711.1V1,100mAh93g
キーポン K611.1V1,000mAh72g
 となっています。

セル(cell)を2つ重ねたバッテリーを2セル(cell)と言いますが,2Sと略すこともできます。これはセルを2つ直列(series)に重ねたという意味だと思います。Cを使うとキャパシティのCと混同すると思います。

コネクターと導線

コネクター  バッテリーには初めからコネクターが付いている物もありますが,複数のバッテリー間でバラバラなので困ることも良くあります。統一するときの参考にコネクターの規格を知っておく必要があります。OEM(コピー品?)も多くありますが,AMASS製(中国企業だと思われます。)について調べてみました。

AMASS T型ウルトラプラグ
 サイズ約14×8㎜
 連続25A(メーカー推奨値)
 最大50A
AMASS XT90
 サイズ29.7×20.8×9.9㎜
 連続90A
 最大120A
 定格電流45A
AMASS XT60U
サイズ約16×8.5㎜
 30分連続60A(メーカー推奨値)
 1分最大100A
 定格電流30A
AMASS XT30U
 サイズ約12.5X5.2
 連続15A(メーカー推奨値)
 最大15秒30A
 瞬時電流30A
 定格電流15A
コネクター kakudai

 左からT型,XT60,XT30,JST JSTコネクターははんだ付けできないのでコード付きの購入をお勧めします。


 XT型コネクターの数字の半分が定格電流のようです。T型よりもXT型の方の接触面積が広く,XT型に移行するものと思います。

導線について  コネクターのカタログに「AWG8まで取り付け可能」などの説明があります。  AWGとは,米国で使用されている導体の直径の表記で,番号が大きいほど銅線は細くなります。  日本ではケーブルのサイズを断面積mm2で表すことが多く,SQと表記されます。  AWG8を換算すると直径3.264mm,SQは8.368mm2(3.14×1.6322)となります。直径3.264mmの導線まで取り付け可能と言うことになります。  AWG,外径,断面積の換算表は下記にあります。  電線館 AWG換算表  下図はホームセンターで購入した導線の写真です。SQで表示されています。

導線
ワイヤー
ゲージ
外径断面積
AWG 83.264mm8.368mm2
AWG 92.906mm6.633mm2
AWG102.588mm5.260mm2
AWG112.304mm4.169mm2
AWG122.052mm3.309mm2
AWG131.829mm2.627mm2
AWG141.628mm2.082mm2
AWG151.450mm1.652mm2
AWG161.290mm1.308mm2
AWG171.151mm1.040mm2
AWG181.024mm0.823mm2
AWG190.912mm0.653mm2
AWG200.813mm0.519mm2

 写真のAVSの「A」は自動車用低圧電線,「V」はビニール被覆,「S」は被覆が薄い(低圧なので)ことを表しています。  SQ 0.5なので,直径約 0.81mm,AWG20程度になります。  上図には12V60W,24V120W以下との表示があります。  消費電力は   P(消費電力)=V(電圧)× I(電流) となるので,この導線は5Aまで流せることになります。  バッテリーやモーターの結線が必要な場合は付属のコードを参考に太さを決めれば良いと思います。最終的には電流を測定し,発熱の無いことを確認します。  モーターの消費電力は三相後流なので計算が面倒です。バッテリー側の電流を測定することで(受信機と ESC の消費電力を0と考えて)モーターの消費電力を測定すればよいと思います。 AWG表記では数値が大きくなるほど線が細くなります。

3 取り扱い

充電回数  リチュウムバッテリーは流れた電気量の分だけ傷みます。つまり充電回数ではなくて電流×使用時間が寿命を決定します。充電回数500のバッテリーは毎回50%まで使用して充電すれば1,000回まで使用できることになります。いわゆる継ぎ足し充電は寿命に何も影響を与えません。  飛行機用のリポバッテリーは充電回数300~500回程度です。

過充電と過放電  電子機器内蔵のリチュウムバッテリーは外部の回路でしっかりと保護されていますから通常は何も気にする必要はありません。スマホのバッテリーも何年もそのままで不都合は起こりません。  しかし,ラジコン用のリチュウムポリマーバッテリーの場合は外部の保護回路はありませんから注意する点があります。  通常使用電圧範囲は1セルあたり 2.7~4.2Vです。4.2Vを超えて過充電すると発熱,最悪の場合は爆発に至りますが,充電器を使用する限りほぼありえないと思います。  2.7V以下に過放電すると使用不可になります。これはESCに保護回路があり,3V程度で作動します。実際プロペラが回らなくなったり,サーボが動かなくなったりするのでわかります。怖いのはバッテリーの外し忘れです。確実に使用できなくなります。  一番の注意点は過電流を流さないことです。過電流の起こりうるのは,コネクターの付け替え時のショート,回路に放電レート以上の電流を流したときなどです。 過電流を流したばあいさまざまな発熱反応がおこり膨らんでしまいます。膨らんだものを使うとさらに発熱反応が次々と起こり,最終的に熱暴走,発火に至ります。膨らんだものは使用禁止です。

保管  リチュウムバッテリーの寿命に一番ダメージを与えるのは過放電です。  リチュウムバッテリーは自己放電で少しずつ残量が減ります。長期間使用しないで保存する場合は電池容量の70%~50%程度の電池残量で常温・常湿保管しておけばよいと思われます。寿命は10~15年程度なので,半年から1年ごとに電圧をチェックする必要があります。

内部抵抗  バッテリーの寿命の判断には内部抵抗も大きな判断材料です。一般に電池の端子電圧は 「端子電圧 = 起電力 - 内部抵抗 × 電流」 となるので,起電力4.0V,内部抵抗 100mΩ,電流 10A のとき  4.0 - 100 × 10-3 × 10 = 3.0(V)  となります。この電圧はESCのカットオフ電圧になるかもしれません。  内部抵抗はバッテリーの劣化に伴い増加します。内部抵抗がどのくらいになったら廃棄かというと容量やセル数により基準になる内部抵抗は異なります。

容量と全体の内部抵抗  例えば下図のAが容量3.7V 500mAh,内部抵抗rのバッテリーだとします。

内部抵抗

 これをBのように並列に接続すると容量は500×3=1500mAhに,内部抵抗も並列なので1/3rになります。電圧は3.2Vのままです。  また,CのようにBを直列に接続すると,容量はそのままで電圧が2倍の7.4Vになります。このとき内部抵抗は直列なのでBの2倍の2/3rになります。  容量は面積に比例,電圧は高さに比例します。セルごとの内部抵抗は容量が大きいほど小さくなります。  バッテリーを購入したら内部抵抗を測定し記録しておき,それと現在の測定値と比較して廃棄の目安にします。

内部抵抗は減らせるか  10年前の2S 1,350mAh 内部抵抗 197 mΩ,244 mΩ のとんでもないバッテリーでテストしてみました。  一度充電器で「ディスチャージ」してから満充電を2回繰り返したところ  容量は900mAh,内部抵抗 88 mΩ,121 mΩ と言う結果でした。内部抵抗はこの状態でも少し回復しました。  結論は当然廃棄です。

4 充電と放電

充電の仕組み  複数セルを直列に接続したバッテリーは直列のまま充電します。3セルならば4.2×3=12.6Vまで充電しますが,指定した一定の電流でゆっくり充電します。  もしセルごとの電圧が異なっていた場合,全体の電圧は12.6Vに達していないのに,電圧の高いセルは先に4.2Vに達してしまいます。これはどのセルにも等しい電気量が追加されるからです。

充電の仕組み

 これを避けるために上図の②~④の回路(バランスコネクター)で監視します。どれかが4.2Vに達したら,①の回路は使わずに4.2Vに達していないセルは②~④の回路で充電します。この充電は電流が少ないので時間がかかります。満充電まで時間がかかる場合はセルのバランスが取れていないと言えます。

充電器  ジーフォース G6 AC Platinum Charger G0194 を使っています。3代目になります。  最近はバッテリーのバランスコネクターも共通になりました,昔はハイペリオンタイプやリトルベランカタイプがありコネクターの付け替えが面倒でした。このタイプはサイドにバランスコネクター用のスロットが付いています。  AC 100 VとDC 12 V の両方で使えるものが必要です。  AC 100 V で車用の鉛バッテリー(20Ah=20,000mAh)に充電して,飛行場で鉛バッテリーを使ってリポバッテリーを充電しています。  飛行前日に1C充電で80~85%まで時間をかけて充電しておいて,飛行場で満充電して飛行という流れで使用しています。満充電のリポバッテリーを長時間放置すれば痛みます。 G-Force(株式会社ジーフォース)は日本の企業です。ただし,Maide in CHina と記載してあります。

充電器 kakudai

 バッテリーの端子に応じた充電ケーブルが必要です。

充電器 kakudai

 最近はバッテリーのバランスコネクタは各社統一されてきたので側面に差し込みが付いています。


 充電器の表示
上段
バッテリー種セル数充電電流(A)トータル電圧(V)
下段
充電方法経過時間(m:s)充電量(mAh)
充電器 kakudai

 充電用のケーブルが必要です。  左からXT30充電用,XT30-T型変換,XT30-XT30変換,T型充電用  自作できます。右端の充電器側は3㎜モーターコネクターで代用しています。


 充電中に + - キーを押すことで各セルの電圧,充電量(%)が表示できます。  ほとんどの充電器が同じような表示,機能です。 G6 AC Platinum Charger G0194 はセルごとの電圧,内部抵抗の測定ができます。バッテリーチェッカーの機能を持っています。 この充電器は放電時(ディスチャージ)1セルあたり3.2Vに設定されています。残量表示(%)は4.2Vと3.2Vの間で現在の電圧をもとに計算して表示していると考えられます。ディスチャージで空になり使えなくなることはありません。

廃棄前は完全放電バッテリーチェッカーなどでチェックして残量0でも実際はかなり残っています。ショートさせると危険です。  完全に放電するにはディスチャージの後に水に浸し,食塩を少量入れて1~2日戸外に放置しておきます。水素と塩素が発生しますが,塩素の水溶液は黄緑色なので,青い色になるのは銅が溶け出しているのかもしれません。  ゴミ出しはできません。行政のホームページを見て引き取ってくれる電気店などを見付けてください。

廃棄

 放電完了

バッテリーチェッカー 「リポバッテリーチェッカー」はセルごとの電圧測定に必要です。  安価なリポバッテリーはバランス充電しないとセル間の電圧にかなり差がでできます。ほとんどのESCで過放電しないようになっていますが,これは全体の電圧で判断するのでセルによっては過放電になる可能性があります。単セルの場合は関係ありません。

バッテリーチェッカー kakudai
バッテリーチェッカー kakudai

 最近はリポバッテリーの内部抵抗が測定できるタイプもあります。


「Tenergy 5-イン-1スマートセルメーター」は次の5つの機能があります。Tenergy Corporation製で会社はカリフォルニア州フリーモントの会社ですが,Maide in CHina とあります。サイズ,外観は同じでロゴが異なります。 ①バッテリー容量チェッカー  LiPo / LiFePO4 / Li-ion / NiCd / NiMHバッテリーパックの推定容量と電圧を表示します。 ②バッテリーバランサー(F1)  CELLボタンの長押し → F1表示 → Checker → F2~F4切り替え 「個々のセルのバランスをとることにより,バッテリーのパフォーマンスを最適化し,全体の寿命を延ばします。」とありますが電圧の高いセルを放電により低いセルに合わせる機能と思われます。 ③バッテリー放電器(F2) 「リチウムベースのバッテリーパックを180mAの放電レートで調整可能なしきい値まで放電できます。」とありますが,バランスコネクターからの放電なので,電流が少なく,また,発熱するので使用時間は6分以内という制限があります。充電器ではもっと高い電流でバランス放電できるので使うことのない機能です。 ④バッテリー内部抵抗テスター(F3) 「リチウムベースのバッテリーパックの場合,このセルメーターは個々のセルの内部抵抗を表示できるため,バッテリーパックの状態を評価して,いつ廃棄または交換するかを決定できます。」とあります。   単位は mΩ で表示されます。最後の数値は小さく表示されますがこれは小数点以下1桁の数値です。  セルごとに揃っていないと取り出す電流により端子電圧にばらつきが出てしまいます。 ⑤ESC / SERVO PPMテスター(F4) 「信頼できるPPM信号を提供して,サーボモーターをテストおよび調整します。」バッテリーをつないでいないと使えないと思いますが,使い方が不明です。

バランス充電  飛行機用のリポバッテリーはかなりいい加減なので,少なくとも2回に1回はバランス充電が必要と思います。  各セルのバランスが狂ってくると満充電まで極端に時間がかかります。バランス充電の場合1つのセルが4.2Vに達するとその後は電流が極端に減って残りのセルを充電します。 逆に90%を超えたあたりから電流が減り,満充電に時間がかかる場合はセルのバランスが崩れているということです。  バランス充電しない場合はセル電圧のバランスが取れていない場合を考慮して100%充電はしません。セル電圧のバランスを揃えるためにもバランス充電は有効です。  KYPOM(キーポン)がかなり売れているようです。性能は良いのですが,やはり中国製はたまに当たり外れがあります。Hyperionは特に今まで不都合ありません。2セルはバランスコネクターがないものもあります。特性が揃っているということでしょう。  10年ちょっと前ですがリトルベランカから販売されていた「リチュウムボーイ」というバッテリーは特性が揃っており何個かは今でも使っています。ただ内部抵抗が増えて容量が減っています。そろそろ廃棄です。

セル間の電圧バランス  セル間の電圧バランスは修復できるか実験してみました。  KYPOM 2S 1,800mAh のバランスが取れていないので測定しながら充放電してみました。  63%の状態からバランス1C充電(1.8A充電)

 残量 経過時間 第1セル 第2セルセル電圧差
 63%   0
 95%  5分 4.03V 4.20V 0.17V
 97% 1時間 4.12V 4.20V 0.08V
 99% 2時間 4.19V 4.22V 0.03V

 ここからストアモード0.6Aで放電(1.0Aを指定しましたが勝手に0.6Aになりました)  約1時間45分で終了。

 残量 経過時間 第1セル 第2セルセル電圧差
 99%   0 4.19V 4.22V 0.002V
 44% 45分 3.832V 3.830V 0.002V
内部抵抗 10mΩ 9 mΩ

 時間はかかりましたが,バランス充電を繰り返すことでセル間の電圧バランスは回復しました。毎回バランス充電した方がよさそうです。

充電器には充電容量が表示されます。これを確認することでバッテリーの劣化状況を把握できます。  例えば,1,000mAhのバッテリーを50%から100%まで充電した場合,計算上は500mAh充電するはずですがこれが少なければ劣化によりバッテリーの容量が減っていることになります。ただし,前述したように残量%の表示は0%を何Vにするかで異なります。誤差があることも考慮する必要があります。 充電器は定電圧定電流で充電します。充電電流は1Cが基本ですが,「最大6C奨励5C」と説明書に記載されているものもあります。

5 慣らし充放電

慣らし充放電とは  通常のリチュウムバッテリーはメーカーの製造過程で容量検査や内部抵抗を検査しています。予備充電充のあと,ガス抜き,本充電するなどさまざまなテストをしています。したがってスマホやパソコンのバッテリーは何も考えなくて使用できます。  一方模型用のリポバッテリーはそのあたりがかなりいい加減のようです。そもそもセルごとに特性が揃っているのが当たり前で,バランス充電すること自体が必要のないはずですが,バランス充電しないとしだいにセル電圧に差がでてきます。また,「慣らし充放電」が必要と記載しているメーカーもあります。  次はエアクラフトから販売されているHyperionバッテリーの使用上の注意です。  「慣らし充放電して電解質の活性化を促し,内部抵抗を下げリポバッテリーをより良い状態にします。慣らし前に使用を開始されますとセルの不活性部分が残ってしまい,性能を十分に発揮できないだけでなく バッテリーの寿命を著しく短くしてしまいます。  可能な限り以下の手順で慣らしをして下さい。充電器のサイクル充放電機能で充放電して下さい。充電 → 放電をインターバル1分程度で3回~4回行います。放電する時の最低電圧は 3.3V に設定します。充放電レートは 0.8~1C に設定して行って下さい。内部抵抗を計測できるのであれば慣らし開始前と完了時の内部抵抗を確認して下さい。」

慣らし充放電の実際 ⑴ Hyperion 2S 850mAh

 20回程度使用。途中でバランスコネクターが破損したのでバランス充電せずに使用していましたが,新しいコネクターを付けました。

 操     作 内部抵抗電位差充電量
第1セル第2セル
残量86%27mΩ43mΩ
ディスチャージ
99%まで2C充電26mΩ26mΩ0.001V877mAh
ディスチャージ
99%まで2C充電22mΩ13mΩ  0V824mAh
49%まで放電
ストレージモード
20mΩ19mΩ0.001V

少し内部抵抗の減少がみられました。 ⑵ Kypom 2S 360mAh  新品を実験してみました


 操     作 内部抵抗電位差充電量
第1セル第2セル
残量56%から1C充電19mΩ14mΩ0.003V
99%まで1C充電22mΩ14mΩ0.003V
ディスチャージ
99%まで1C充電20mΩ14mΩ0.007V
ディスチャージ
99%まで1C充電20mΩ14mΩ0.003V360mHh
ディスチャージ
99%まで1C充電20mΩ14mΩ0.003V360mHh
47%までストレージモードで放電15mΩ9mΩ0.001V

顕著な内部抵抗の減少はみられないようです。  30分後内部抵抗は20mΩ,13mΩになっていました。温度によるようです。  Hyperionでも慣らし充放電が必要と書いてあるシリーズとそうでないシリーズがあります。上記のHyperionは慣らし充放電が必要なシリーズです。  一般にHyperionのバッテリーはもともと内部抵抗が小さく 10 mΩ 以下です。それに対してKYPOMは 10~20 mΩ あります。 データが少なくて正確なことは言えませんが,新品のバッテリーで内部抵抗の大きなバッテリーは慣らし充放電を試してみる価値はありそうです。時間がかかりますが,少なくともセル間の電圧差は小さくなります。  充放電直後に比べしばらく時間が経過したら内部抵抗は少し増えます。化学変化は温度が高いほど活性化するので,充放電直後の電池内部は室温より高くなっているのではないかと思います。  新品のリポバッテリーの残量も同一製品で大きくばらつきがあり,25%ほどというのもあります。これが自然放電の大小によるものであれば在庫期間の長いものではないかと思います。


リポバッテリーはメモリー効果があるわけではなく減った容量は回復しません。消耗品です。  消耗品なので正しく使って寿命を延ばす工夫が必要です。  ~ 雨の休日はバッテリーのメンテナンス ~


参考文献等  ▶リチュウムイオンバッテリー 株式会社ベイサン  ▶AWGとSQ換算「電線館」  ▶アペックス テクノロジー ジャパン株式会社

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