カバーフィルム

今まで使用してみたフィルムについて感想を書いてみました。
高価なフィルムもそれなりに丈夫で軽く貼りやすいと感じます。安価なフィルムはやはり重かったり,日にあたるとたるんだりします。
自作の場合,テスト飛行が多く,着陸失敗や最悪墜落するなどアクシデントはつきものです。補修だけでなく全面的にフィルムの貼り替え,機体の手直しなどが結構あるので安価ものを使っています。安価なフィルムも十分飛行には耐えられます。

いろいろなカバーリングフィルム

オラカバ

 強靭なポリエステル製フィルムです。色により厚さが異なります。ドイツのラーニッツ・プレナ社製です。  ホワイトやカブイエロー,フェラーリレッドなど貼りやすいものと黒(ラメ入り)などの貼りにくいものがあります。  古くなると糊が劣化するようでアイロンの熱で縮むと同時に糊の部分がずれてきます。良く売れる色は在庫機関が短く,めったに無い色は在庫期間が長く,糊が劣化していることが多いようです。単に下手なのかもしれませんが……  60㎝×200㎝で3,000円前後です。 データ  厚さ:23 μm  最小縦/横方向の引張強度:250/250N/mm2  最小縦/横方向の引張伸長:90/90%  重量:64~109g/m2。色により重さが異なります。  収縮率:5%2軸,150℃を基準にして温度が10℃上昇するごとに1%線形  収縮率が大きいので曲面が貼りやすい。

オラライト

 オラカバより薄く半透明で,貼りやすい。  オラカバの欠点は高価であるということに尽きるようです。 データ  厚さ:12μm  最小縦/横方向の引張強度:250/250 N/mm2  最小縦/横方向の引張伸長:90/90%  収縮率:5%2軸,150℃を基準にして温度が10℃上昇するごとに1%線形  重さ:36g/m2  収縮率が大きいので曲面が貼りやすい。

オラテックス

 絹目調タイプです。オラカバより少し高価です。 データ  厚さ:90~110μm(シルク光沢:120μm)  最小縦/横方向の引張強度:375/375N/mm2  最小縦/横方向の引張伸長:30/30%  重量:90~110g/m2(シルク光沢:110~120)  収縮率:5%2軸,150℃を基準にして温度が10℃上昇するごとに1%線形  引き裂き伝播荷重(縦および横):最小6 N

テトラ ソーラーテックス

 リンケージなどで有名なTETTRAだと思いますが,テトラ本社のページでは販売していません。  高価なので使ったことはありませんが(一般的なサイズで5,000円前後)それなりに高性能と思います。  超軽量で強靭,曲面を貼るのが容易,収縮後にゆるまないなどの特徴があるようです。ゆるみがないのは素晴らしい特徴だと思います。

Aフィルム

 OK模型が販売元ですがPILOT製と思います。高温タイプです。オラカバより少し安価です。  PILOT-RCは中国の企業です。 データ  熱収縮性ポリエステルフィルム  70cm×200cm  収縮温度:約150℃(色により収縮温度は異なります)  厚さ:μm(フィルムの厚さは色によって異なります)  重さ:約53.3g/m2

Eライト

 OK模型が販売元ですがPILOT製と思います。高温タイプです。 データ  熱収縮性ポリエステルフィルム  70cm×200cm  収縮温度:約200℃  厚さ:20μm  重さ:27.8g/m2

HKカバーリングフィルム

「ホビーショップ・アルファ(千葉県船橋市)」から販売されている中国製のフィルムです。  値段が63.8cm×165cm ロールで900円ほどとオラカバの1/3の値段です。色はきれいですが少し傷付きやすいように感じます。とにかく安いのでテスト機などの作成にはうってつけです。  カラーフィルムの下に白のフィルム,糊と三層構造になっていますが,カラーフィルムよりその下の白いフィルムの収縮率がわずかに小さく,高温だと端に差が出て下地の白が残ってしまいます。  下地の白は多分糊でした。マニキュアリムーバーをしみこませた脱脂綿で擦ると取れました。 データ  重さ:80g/m2  クリアタイプは50g/m2  データがありませんが,オラカバより低温で収縮しはじめてあまり高温には耐えられません。  最近長さが1mで販売されているようです。実質的な値上げのようです。

RCDONKIフィルム

 RCDONKIは台湾の企業のようです。普通タイプとクリアタイプがあります。  66㎝×5mで2,000円台前半の値段です。  直接台湾から購入もできますが到着まで日数がかかります。また,何となく支払いなどよくわかりません。そこでヤフオクに「rc_donki」のお名前での出品がありましたので5本(5色25m分)購入しました。送料はまとめていただいたので総額12,000円程度でした。直ぐに発送してもらえました。「RCDONKIフィルム」で検索するとヒットします。  見かけ上は「HKカバーリングフィルム」と同じに見えます。当分はこれを使います。  厚さ重さのデータが不明ですが重いように感じます。

カバーリングフィルム kakudai

 写真上がHKカバーリングフィルム,下がRCDONKIフィルムです。見分けがつきません。両方とも下地は白,糊付き,薄いフィルムで保護されています。真ん中はRCDONKIのクリアタイプです。 Robin HR-200 で使ってみましたが特に問題ありません。HKカバーリングフィルムと同等です。

ポリエステルフィルム-12

 これも「ホビーショップ・アルファ」から販売されています。厚さ12μmでのり付きです。練習用ラダー機や練習用軽量セスナの主翼に使っています。  200g程度までの機体には十分です。  熱であまり縮まないので初めにできるだけピンと張った状態から加熱する必要があります。ピンで留めるよりマスキングテープを半分幅(5㎜程度)に切っておき,できるだけ多くの個所を止めていきます。何回もマスキングテープを貼りなおしてたるみの無いようにしてから熱を加えます。

カバーリングフィルム

↑重さ28.5g/m2

ウルトラマイクロフィルム-4.0  これも「ホビーショップ・アルファ」から販売されています。厚さ4ミクロンで糊がついていません。練習用ラダー機でテストしてみましたがブッシュに突っ込むと破れます。軽くて良いのですが,やはり室内機向きでしょう。フィルムで強度を持たせるのには無理なようです。

カバーリングフィルム

↑重さ5.8g/m2
 薄いので芯に巻いてあります。購入時は畳んであります。

Airspan 「コスモテック(東京都西東京市)」から販売されているイギリス製のフィルムです。「和紙の風合いのポリエステルフィルム」とありますが,布貼りのかわりのようです。接着剤が極少量塗布されています。厚さ33ミクロンで500mm×1,830mmで1,850円でした。  Sfan Ⅱの主翼を作り替えたときに使ってみようと思いますが,白色しかありませんが塗装できます。  熱を加えた時の収縮率が小さいので初めから弛まないように貼る必要があります。

カバーリングフィルム

↑重さ:24g/m2

美濃紙  美濃紙は主にゴム動力飛行機の「翼紙」です。「翼紙」で検索すればいくつか見つかります。「美濃紙」では見つけにくいと思います。  私は「フリープレーンのヨシダ㈱(岐阜県美濃市)」から購入しました。  なかなかうまく脹れません。昔よく使ったのですが……。ぬれたのが乾くと縮みすぎて破れてしまいました。大きなスパンは無理なようです。ゴム動力機か室内機にしか使えないかもしれません。 「フリープレーンのヨシダ㈱」には懐かしのゴム動力飛行機が豊富に揃っています。ゴム動力飛行機にサーボをつけても楽しいような気がします。

カバーリングフィルム

その他のフィルム  以前はハイペリオンのフィルムもありましたが,最近は販売されていないようです。糊が厚く貼り直しには苦労しました。保護フィルムがなく直接糊の面が露出していました。美しい光沢のフィルムでした。

カバーリングフィルム

PETフィルム(ポリエチレンテレフタレート)は東レから「ルミラーT60 ロール(1000mm×20m)耐熱規格 105°C」が販売されていますが,使用可能かどうか不明です。透明しかないのでバルサを着色する必要があります。塗料代,接着剤の費用を考えると結構かかると思います。(軽量モーターグライダで透明フィルムとスプレー塗料を使ってみました) 価格比較するときは長さに注意が必要です。幅はほとんどが0.6m程ですが,長さは1m,2m,5mなどあります。 上に示したショップは「オンラインショップ」のページにリンク先があります。

フィルム貼りの注意

意外に重い?

 一般的に販売されているサイズは0.60m×2.0mで,面積は1.2m2です。全重量200~300g程の小型機でフィルムを半分使った場合,オラカバの重さを100g/m2,オラライトを36g/m2とすれば差は(100-36)÷2=32gになります。これは全重量の1割を超えてしまいます。  小型機やグライダーは,面積の広い主翼や重心から遠い尾翼は特に影響が大きいので,その部分だけでも軽量フィルムを貼る方がよいと思います。

下地の重要性

 下地が滑らかではないと糊の付きが悪くなります。クリアラッカー2回塗りで400番程度のペーパーで仕上げています。  バルサのつなぎ目,接着部分の段差や凹凸は木工用パテで埋めるとフィルムがきれいに仕上がります。特に翼の角などはしわの原因です。

カバーリングフィルム

↑写真はセメダインの木工用パテです。ベージュとホワイトがあります。

カバーリングフィルム

↑小さな部分をパテで埋めるので付属のプラスチック製のヘラはうまくいきません。カッターの刃を使うとうまくいきます。  また,付きが悪いときは霧吹きで埋めようとする部分を軽く湿らせるとうまくいきます。

カバーリングフィルム

↑上図の青い丸の部分は特に注意が必要です。このような部分はコーナーに皺が生じて熱を加えても修復できません。

フィルムの仮止め  フィルムは縮まないように貼るのが理想ですが,そのように貼るのは無理です。できるだけピンと張った状態で貼っていくことが大切です。  弛まないように貼る為にはフィルムのできるだけ多くの部分を機体に仮止めすること。そのために便利なのが塗装に使うマスキングテープです。これでできるだけ多くの部分をとめていきます。なんども剥がしては貼る作業を繰り返します。

カバーリングフィルム

↑テープで留めた状態。

カバーリングフィルム

↑裏側の様子です。

 アイロンの温度はフィルムが縮む温度ではなくてフィルムの糊が溶ける温度が基本です。その温度で周りから熱を加えていきます。  貼り終わった後で皺が有ったら少しだけ温度を上げてアイロンを当てます。皺がとれるまで少しずつ温度を上げて繰り返し熱を加えていきます。 アイロンはソックス(当て布)を使う方法もありますが,アイロンを動かさないで上から当てていくとフィルムに傷が付きません。また,温度管理も簡単です。 アイロンを当てるとアイロンから熱が逃げて温度が下がります。3~5秒程度当てたままにします。 糊の効きが悪いときはアイロンを当てた後,指で押さえて温度が下がるのを待ちます。

高い温度でフィルムを縮めるとき

 主翼の付け根や先端のコーナーはリブや後縁材の幅が狭く熱を加えても糊が効かずしわになることが多いのですが,ほんの少量瞬間接着剤を付けるとやや高い温度で熱を加えてもずれないのでしわになりません。

カバーリングフィルム

↑翼端の処理です。  初めに裏側から張りますが縁の部分は狭いのでフィルムの糊が効きません。

↑瞬間接着剤が乾けば高温で皺を取ることができます。

●注意フィルムは熱で縮むということ  当然熱収縮フィルムなので当たり前ですが,熱を加えすぎで強く縮め過ぎるとバルサを変形させてしまうことがあります。  特に翼の後縁などの弱い部分が変形してしわの原因になります。しわを取ろうと熱を加えるとさらに変形してまたしわができるといった悪循環になってしまいます。  凹凸がないことと初めからたるませないこと,熱を加えすぎないようにすることが大切です。

温度が高いと糊は効かない  縁から熱をくわえていきますが,縁はバルサが厚く,熱容量が大きいのでなかなか温度が下がりません。温度が下がらないうちに中心部分に熱を加えると縁の部分の糊はまだ効いていないのでずれてきます。  それを防ぐにはぬれた雑巾などを当てて温度を下げるか十分時間がたってから次の作業に移ります。  アイロンはTOSHIBA 裁縫こて ピンク TA-A20(P)を使っています。アイロンシュー(あて布)は使っていません。アイロンシューを使わずにフィルムに上から当てるだけでスライドさせないようにしています。  小さいものが必要ならば手芸用ミニコテもあります。

カバーリングフィルム

↑平面を貼るときは「弱」で貼って「弱」と「中」の間で皺を取っています。

曲面は無理をせずに  曲面を貼るときはフィルムを強い力で引っ張りながら貼りますが,無理をせずに分割して短冊で貼れば楽です。  つなぎ目はクリアラッカーを塗っておけば剥がれることもありません。

フィルムのカットと貼る順序

カバーリングフィルム

↑上からみたときに美しいように,胴体は下から貼っていきます。

カバーリングフィルム

↑胴体など2分割で貼る場合は,後ろから貼っていきます。フィルムの残りを考えると長さが足りない場合もよくあります。

 水平尾翼やエレベーターは下から貼ります。垂直尾翼は左右どちらから貼っても構いません。

カバーリングフィルム
カバーリングフィルム

 主翼も下から貼ります。前縁部分の上側は下まで巻きます。上下で色を違えるときは前縁後縁とも巻き込む部分の幅を同じにしないと美しくありません。 尾翼などの非対称部分は型紙を作ってからカットした方が正確です。  またカットするときは,重なり部分を含めるので少し大きめにカットします。平らな部分を貼ってから巻き込み部分の端や角の余分な部分をハサミなどで切り取ります。その後巻き込み部分を貼ります。 直線部分を張ってからハサミなどでカットするのは難しく綺麗に仕上がりません。初めから正確にカットします。フィルムの幅や長さは図面よりも,紙テープで実測すると間違いがありません。

カバーリングフィルム
カバーリングフィルム
カバーリングフィルム

↑フッ素コートのハサミですが,片方の刃がのこぎり状になっていて滑らずにフィルムず真っすぐ切れます。

フィルムのメンテナンス フィルム剥がしと汚れ落とし

 補修などで機体のフィルムを貼り替えるとき,フィルムを剥がした後,頑固なフィルムの糊が取れないときがあります。そのような時はラッカーシンナーで取れます。  ラッカーシンナーは手に触れないように手袋が必要です。三重化学工業から耐シンナー手袋,王子ゴム㈱からシンナーSOSが販売されています。普通のゴム手袋は溶けます。必ず戸外で使用します。(モノタロウで購入しました。)  100円ショップでマニキュアリムーバー用の小さくカットしたコットンが販売されているので,これにシンナーをしみこませて拭きます。  また,表面の頑固な汚れはマニキュアリムーバーが役に立ちます。これも100円ショップにあります。こちらは手袋なしで構いません。

気泡の処理

 バルサで覆った部分は,日差しが強いと気泡ができることがあります。  張った時よりやや高い温度でアイロンを当てますが大きな気泡は針で穴を開けて空気を出します。熱を加えたらすぐに指で押さえると上手くいきます。くれぐれも温度を上げないように様子をみながら作業を進めます。

カバーリングフィルム


参考文献等
オラカバーの本社です。(ドイツ)
 ▶ラーニッツ・プレナ社
ラジコン専門店RCアドバイザーチャンプ(大阪市)
 ▶RCアドバイザーチャンプ ネットショップ(エアー)

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