超音波カッターで切れるもの
普通のカッターナイフで切れるものは何でも切れますが,普通のカッターナイフで切れないABS,アクリル樹脂など(メーカー公表値3mm厚以下)も切断可能です。
使い方と仕組み
使い方と言っても特に難しいことはありませんがいくつか注意することがあります。 ●スイッチを入れても振動数が高いので,目で見て振動していることは分かりません。素材に当てると力を入れずに切れるのでわかります。 ●定規に当てて切ることはできません。 刃の振動でプラスチックの定規は摩擦熱で溶けます。金属の定規は擦れる音がして,かなりの負荷になります。目で見えませんが刃は超高速で振動しています。刃の側面を物に当てるとかなりの摩擦熱が生じます。 ●カッターマットの上で切るとマットを摩擦熱で溶かしてしまいます。段ボールなどをカッターマット替わりに使用すればよいでしょう。 小さな部品など手で持って切ると振動で持っている部分が熱をもちます。 シナベニアや厚手のバルサは真っすぐ刃を当てないと斜めにすると発熱して焦げてしまいます。 薄いプラスチック板は High モードでは切断面が溶けます。Normal モードで力を入れずに切ります。 ●カッターの刃は普通のカッターと同じで消耗します。替え刃が必要です。 ●最も大切なことは普通のカッターナイフのように力を入れないことです。急がずにゆっくり切るのがコツです。
●切断面は刃の入る幅が必要です。 刃には幅があります。材料を押し広げて切っていくか,溶かして幅を作って切っていきます。
刃の厚さ程度に押し広げられない固い材料は切れません。ただし,熱で溶ける材料,プラスチック類は簡単に切れます。
●注意 ⑴ 電源の立ち上げ方法により動作が異なります。 ・何もせず電源を入れる スイッチを押して離したら10分動作 ・ハンドピーススイッチを押しながら電源を入れる ハンドピーススイッチを押している時だけ動作し,3分ごとにスイッチが切れ温度を確認します。 ⑵ハイパワーモードは負荷が大きい場合に限界近くまで電力が入力されます。あまり使わない方が良いかと思います。 ⑶ 切断物との摩擦熱と自ら振動する熱が超音波振動子を熱破壊しないように,ある温度まで上昇すると停止します。 ⑶次のような場合,電源ランプが点滅して異常を知らせます。 ①刃の締付不足 ②刃固定具の汚れ、ホーン内部の汚れ ③力の入れすぎ ④振動子の劣化 ⑤指定以外の違う刃を使う
カットの実際
バルサとシナベニアバルサは木目方向には広がるので簡単にきれます。木目と直角方向は時間がかかり,摩擦熱で焦げることもあります。 バルサやシナベニアは決して一様な材質ではなく部分的に硬さが異なります。固いバルサはシナベニアより切りにくい部分があり,一様に切れません。
↑2㎜シナベニアのカットです。刃先を立てた方がよく切れます。切断面は焦げてきます。あまり力を入れずにゆっくりと当てていきます。
レーザカットが中途半端に終わることがあります。直線ならばホビー鋸やカッターナイフの方が使いやすいのですが,レーザーカッターの切り残しは曲線が多くカッターナイフでは処理に時間がかかります。
↑レーザーカッターでシナベニアをカットしてホーンを作ったのですが,裏側はカットできていない部分が多くありました。これは本当に助かります。
固い材料 ガラスエポキシ,カーボン板はルーターや鉄鋸の方が良く切れます。
↑1㎜厚のガラスエポキシを切断してみました。切断面は細かく破壊されています。相当時間がかかりました。
↑刃先は折れて熱で変色しました。
カッターで切れないものは切れません。振動の熱で溶ける材質は簡単に切れます。当たり前ですが何でも簡単に切れる魔法のカッターではありません。 無理して固いものを切ると振動体が破損します。ガラスエポキシやシナベニアはカットしない方がお勧めです。
樹脂類プラスチック板,アクリサンデーは良く切れますが,刃の厚さの分は熱で溶けてしまいます。熱で溶けるので刃が入ります。 固まったエポキシ樹脂接着剤も良く切れます。余分な部分の除去や補修時の除去も楽です。ミニルーターで削るより便利です。
便利と感じること次の作業に重宝しています。 ・エポキシ樹脂接着剤を熱で溶かす。(接触面の修正) ・バルサにヒンジを取り付けるための溝を掘る。 ・機体内部からコネクターを外に出すための穴を開ける。(バルサ部分)
参考文献等 本多電子(株) ▶超音波カッター ZO-41II