モーターの推力計算

モーターの推力は計算できるのか,推力はどの位必要かについての考察です。
最近はプロペラと推力,電圧,電流についてデータを示してあるモーターが増えてきましたが,実際に搭載すると胴体の影響などで期待通りの推力が得られないことが多いと思います。
推力の大きすぎるモーターを付けると推力に機体が付いていかなくて制御不能になることもあります。

推力重力比

実機の静止推力はどのくらい?

 次の表はジェット旅客機についての推力重力比(推力/重力)です。(JALの「航空実用事典」のデータから計算)

全幅
(m)
全長
(m)
推力
(t)

離陸
推力
(t)
最大
離陸
推力
推 力
重力比
ダグラス
MD-11
51.761.2273 812800.29
ボーイング
747-400
59.670.72541032720.38
ボーイング
767-300
47.654.9212 431330.33
ボーイング
777-200
60.963.7342 692300.30
エアバス
A30084-2C
44.853.6232 461500.31
エアバス
A310-200
43.648.6212 431320.33
エアバス
A310-300
59.459.43141272570.50

 およそ0.3最大で0.5です。つまり,機体重力のおよそ1/3の最大静止推力です。戦闘機では1.0を超えているものが多く,垂直上昇できます。模型飛行機の場合は,機種や飛ばし方にもよりますが,0.5以上あれば十分と言えそうです。  しかし,風の影響や目測を誤って急な回避が必要な場合もあります。そのようなことを考えると模型飛行機の場合は飛行中の推力は1.0以上必要と思います。 飛行中の推力は静止推力より大きくなります。また,カタログデータ通りの推力が出るとは限りません。そこが難しいところです。  静止推力が機体重量程度を目安にして選んでいます。あまり推力が有りすぎてもうっかりパワーをかけると剛性不足で暴れて操縦不能になることもあります。

静止推力

 プロペラは直径とピッチで表されます。直径とピッチの他にも形状(先が太い狭いなど)により推力が異なってきます。プロペラに関しては「電動ラジコン飛行機の機器」のページの「1 プロペラ」を参照してください。

力の単位gfとは

 1㎏の質量の物体に働く重力を1㎏w(kilogram-weight)または1㎏f(kilogram-force)と書きます。実生活では体重60㎏と言いますが㎏は質量の単位ですから60㎏wまたは60㎏fが正しいのです。模型飛行機の場合,静止推力あまり大きくない範囲なので,単位はgwまたはgfを使います。これも単にgと言いますね。  力の単位はN(ニュートン)ですが,1Nは1㎏の質量の物体に1m/s2の加速度を生じさせる力で,重力加速度が9.8m/s2なので1㎏wは9.8Nに相当します。 ちなみに質量1gの物体に1㎝/s2の加速度を生じさせる力を1dyn(ダイン)と言います。1gwは980dynに相当します。(ここでは重力加速度は980㎝/s2

静止推力

 静止推力は   静止推力 ∝ プロペラ直径3×ピッチ×回転数2  で表されます。  推力をgf,プロペラ直径D(inch),ピッチP(inch),回転数N(rpn),比例定数をKとして  gf=D3PN2×10-10×k ----①(注 下部参照) のように書けます。10-10は推力をgfで表すのと比例定数Kの数値が2桁程度になるようにするためです。  1inch=2.54㎝ですから㎝単位で比例定数Kを表してもいいのですが,ショップのカタログはinch単位なのでこのままの方が便利です。  下表はKV値1700のブラシレスモーターのカタログデータです。 gf/Wは消費電力1Wあたり何gfの推力を出しているかをあらわします。効率と考えてよいと思います。

プロペラ電圧電流回転数静止推力
APC 6X4E7.4V3.7A 8713132gf(4.8gf/W)
APC 7X4E7.4V4.7A 7779189gf(5.4gf/W)
APC 8X4E7.4V5.6A 6236222gf(5.4gf/W)
APC 6X4E11.1V6.5A11745250gf(3.4gf/W)
APC 7X4E11.1V7.4A 9864295gf(3.4gf/W)
APC 8X4E11.1V9.0A 7459300gf(3.0gf/W)

 ついでに電圧と電流から馬力を計算してみました。

プロペラ電圧電力出力W 出力ps
APC 6X4E7.4V3.7A27.4W 0.037ps
APC 7X4E7.4V4.7A34.8W 0.047ps
APC 8X4E7.4V5.6A41.4W 0.056ps
APC 6X4E11.1V6.5A72.2W 0.098ps
APC 7X4E11.1V7.4A82.1W 0.112ps
APC 8X4E11.1V9.0A99.9W 0.136ps

馬力の単位は 1PS=735.5W(メートル法) と 1HP=745.7W(ヤードポンド法) の若干の違いがあります。 実際の出力(馬力)はこれより小さくなります。(効率はモーターにより異なります。)

 このデータを元に定数kを求めて見ました。

KV値 1,700 のブラシレスモーターの測定
直径

KVV回転数
KV×V
rpm
回転数
実測
rpm
比率
%
推力
予備
計算
推力
実測
gf
定数
k
641,7007.412,580 8,71369.35.5612318.7
741,7007.412,580 7,77961.88.3018922.7
841,7007.412,580 6,23649.67.9622227.8
641,70011.118,87011,74562.211.9229024.3
741,70011.118,870 9,86452.313.3529522.1
841,70011.118,870 7,45939.511.3930026.3

※推力実測値から定数kの計算。
 直径とピッチの単位はインチ

 比例定数kの値が分からないので,推力予備計算は回転数実測を用い,②式のkを除いた計算結果です。逆に推力予備計算と静止推力実績からkを求めています。kはプロペラの形状によって異なりますが,このプロペラの場合は平均で24です。  Kv×V で求めた回転数と実測とは大きく違います。これはプロペラの抵抗が大きくなると,無負荷の時より回転数が減り,誘導起電力が減ります。その結果電流が増え,モーターのコイル,電池の内部抵抗,ESCなどでの発熱が増えてエネルギーが失われるからです。比率を見ると40~70% の回転数になっています。

実際の回転数

 Kv×Vとしてもとめた回転数と実際の回転数は大きく異なります。回転数を実測できれば①式で静止推力は計算可能です。 ①式でプロペラの直径を1.16倍にした場合,回転数が変わらないとして,1.163=2.27倍です。実際は回転数が減るので上の表では1.53倍になっています(7.4Vで6から7に変えたとき)。

kを使って静止推力計算

 次は,Waypoint 2205-1100 のカタログデータですが静止推力を測定していないので①式で計算して見ました。

静止推力計算

 Waypoint W-E2208-30Tの静止推力の推定です。カタログに電圧と電流しか記載してありませんでした。そこで回転数をKv×vから求めた値の50% として②式で静止推力を推定してみました。

推力アップと回転数

 推力はプロペラが空気に与えた力積なので,プロペラ前後の空気の速度を v0 vとすれば   Ft=m(v ―― v0)  1秒について,この間の速度変化をΔvとすると    F=mΔv  運動エネルギーの変化は    分数 mを2倍にして,Δvを1/2にしても②式より推力Fは変わりません。しかし,このときΔKは1/2です。

推力アップ

 空気に与えなければならないエネルギーが半分になるわけですから効率がよいことになります。  mを大きくするにはプロペラの直径を大きくすればいいわけですから,大きなプロペラをゆっくり回した方が効率はいいわけです。  ドローンは効率が悪く,オスプレイは効率が良いということです。  理想的な状態で考えています。実際はほかの要因もいろいろ働きます。

飛行中の推力

 プロペラの断面は翼型と同です。翼が迎え角15°くらいで失速するならばプロペラも失速することになります。ピッチの大きいプロペラは失速しやすく,抵抗が急激に増します。ダクトファンなどは静止状態では間違いなく失速しています。  上空で飛行中の場合,飛行機から見て空気に速度があるのでプロペラの迎え角は減り,抵抗が減少します。したがって回転数は増加し,推力も増加します。理想的な場合ピッチ×回転数が飛行機の速度となり,これが飛行機の最大速度となります。

飛行中の推力

 上の右の図で迎え角0°のときが最大速度です。  プロペラについて,迎え角0°のときクラークYの揚力係数は0ですが,抗力はあります。また,機体の抗力もあるのであらゆる抗力が0ならば上の関係が成り立ちますが,あらゆる抗力が0と言うことはあり得ないので最大速度は「飛ばしてみなければわからない」が正解です。

推力不足による失速

 急上昇するとき,推力が不足すると速度が出ず,揚力不足で機体の進行方向と機体の向きが大きく異なり,結果として迎え角が大きくなり失速します。  推力不足でも,いったん急降下して速度を増やし宙返りすることはできます。水平飛行から宙返りするには推力重力比は1あれば可能です。 旅客機は戦闘機のように大きな角度で急上昇できません。

推力不足による失

 カタログデータからモーターとプロペラを決定できれば楽ですが,カタログデータからは不明な点も多く,計算で類推が必要なこともあります。最終的には実際に飛ばしてみて判断していきます。  推力はプロペラが空気に与えた力積(運動量変化)として空気密度をρ,プロペラ前面の空気の速度を v,速度の増加を⊿ v,プロペラ面積をSとして, T = 2ρS⊿v(v+⊿v) ----②  となります。 ①式の根拠が分かりませんが,模型飛行機の世界では広く使われています。どなたかご存じの方は教えて頂ければ助かります。  ②式からは   静止推力なので v=0,1秒間では⊿v = Pn(ピッチ×回転数)   また S ∝ D2 となり   T ∝ ρD2P2n2 ∝ D2P2n2 ----③ となってしまいます。  ①③式共に次元解析の結果はMKS単位でKgm/s2=N となります。


参考文献等  ▶JAL 航空実用事典  ▶公益財団 日本航空技術協会 図書立ち読み

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