作製と調整,練習方法

 飛行機は軽くないと飛びません。当然,軽く作ると壊れやすくなります。
 せっかく手に入れた機体を飛ばした瞬間大破ということもあります。そうならないためにも基本的な練習は必要です。
 初めて自作される方向けの記述です。ここでは主に「練習用ラダー機」「スチレンボード機」について記述しています。

飛ばす前に  ドローンとは「無人航空機」のことで,ラジコン飛行機,ヘリコプター,グライダーなどすべてを含んでいます。いわゆる「ドローン」は「マルチコプター」と言います。世間一般ではどうも誤解が多いようです。  200g以下は規制対象外と言われていますが,規制はあります。下記のページに航空法など詳しく掲載してあります。必ず理解しておいてください。  ▶一般財団法人日本ラジコン電波安全協会  また,2022年(令和4年)6月20日より「無人航空機」の登録が義務化されます。これは100g以上のすべての「無人航空機」を登録しないといけないようになります。  ▶無人航空機の機体の登録制度について   (日本ラジコン電波安全協会)  同じ日本ラジコン電波安全協会のサイトで「ホビー用ラジコン操縦士」を登録して保険に加入しましょう。  ▶一般財団法人日本ラジコン電波安全協会   ラジコン操縦者の皆様へ


作製上の注意

最も大切なことは,焦らずゆっくり,確認しながら正確に作ることです。  また,鋸は「鋸の重さで切る」ことが大切で,加工しやすいからと言って急いだら失敗します。カッターで削るときもできるだけ薄く少しずつ削ります。

主翼  主翼は揚力の大部分を発生させる重要な部分です。これをいかに正確に作るかより性能が極端に変わります。 ①リブを正確に切り出す  リブの切り出しは大変ですが丁寧にゆっくりカッター(小さいカッターの刃は薄く切りやすい)で切っていきます。一度に切るのではなく何回も繰り返しながら少しずつカットします。

②ねじれがないこと  ねじれのない翼を作るには,基準となる平らな板の上で組み立てます。 また,バルサも乾燥状態によって反りが生じます。そりが生じたときは基準となる板の上でマスキングテープ(カー用品が良くつきます。)で止めたあと霧吹きで湿らせたあと重しを載せて2~3日置きます。

Robin

③強度があること  強度に関しては図面に示したリブの厚さと間隔を守れば十分だと思いますが,反りを取った後にクリアラッカーか油性ニスを塗ります。  バルサも硬いものや柔らかいものがあるので弱そうな部分はエポキシ樹脂(接着剤)をシンナーで薄めて筆で塗っても強度がでます。

カバーフィルムの貼り方

 いろいろなフィルムがありますが,安いフィルムでも十分使用に耐えます。  曲面などは慣れないうちはあまり広い面積を一度に貼らずに分割して貼ります。つなぎ目は10㎜ほど重ねます。主翼などではつなぎ目はリブの位置でないと途中では重ねて貼ることはできません。

カバーフィルムの貼り方

↑三分割で貼ると上反角がある場合など簡単になります。


カバーフィルムの貼り方

①フィルムの選択  フィルムは当然厚いほど強度がありますがその分重くなります。小型機やグライダーはクリアタイプの軽いものが良いと思います。「カバーフィルム」のページも参考にしてください。 ②熱を加える前に  アイロンで熱を加える前にマスキングテープで皴のないように止めます。できるだけ多くの場所を止めます。張り具合を見て何回も満足するまでやり直します。 ③低い温度から始める  低い温度で周囲を止めます。糊があまり利かないときは温度を上げずに時間をかけます。バルサの厚いところは薄い所より時間がかかります。  周囲だけ止めて残りの部分も同様に貼ります。  コーナーの部分などはフィルムの端を極少量の瞬間接着剤で止めます。  全体を貼り終えたらアイロンの温度をわずかに上げてたるみがなくなるまでフィルムに熱を加えます。  熱を加えすぎるとフィルムが縮みすぎてバルサが変形します。あまり温度を上げずに時間をかけて少しずつ縮めていきます。時間をかけたところはぬれた雑巾などをあてて温度を下げます。高温なのでたるみがあるようですが温度を下げるとたるみは消えることも良くあります。 ④変形の補正  最後にフィルムを貼ったことによる翼の変形を補正します。翼端の戻り下げなどもここで行います。フィルムを貼った後で翼のねじりを補正できますが,貼る前の段階でねじれのないことが重要です。  ここまで終わったらつなぎ目に筆でクリアラッカーを塗っておけば剥がれにくくなります。

テストと調整

 特に調整が必要なのはスラストライン(推力軸の傾き)主翼の取り付け角です。  これは重心をしっかりと決めてから行います。重心は主翼前縁から33%の位置です。

グライダーの手投げ

 グライダーは手投げで滑空状態を見ます。力いっぱい投げる必要はありません。  片手で重心付近をもって水平からわずかに下向きに機体を押し出します。もう片方にはプロポを持ちます。ラダーなどはニュートラル,スロットルはOFFです。  手を直線上に動かせているか何回か練習します。決して上向きになげてはいけません。  押し出したらエレベータを操作して滑空状態を確認します。  このとき真っすぐ滑空しないときは翼のねじれがないか,エルロンは左右同じ角度か,ラダーは真っすぐか確認します。  エレベータを引かないと滑空しないときは,前が重い場合と主翼の取り付け角度が不足している場合の二つがあります。再度重心を見て判断します。

手投げ

↑手投げ名人「あいらフライトクラブ」Y氏特別出演

滑空

↑軽量モーターグライダーの滑空

滑空

↑まっすぐ滑空し,徐々に高度をさげ,地面効果でさらに長い距離滑空するようになるまで調整します。「軽量モーターグライダー」は50m以上は滑空します。

 Movie 

↑「ダイソー300円グライダー」を電動化したものの滑空状況です。機体を押し出しただけです。何も操作していません。

滑走テスト  グライダー以外は手投げは無理?です。お勧めしません。滑走テストをしながら少し浮かしてすぐに着陸で様子をみます。

滑走テスト
10~20㎝浮いたらすぐにスロットルをカットして着陸させます。
主翼は迎え角が付いているのでエレベーターを引かなくても速度が出てくると自然に浮きます。
前を僅かに重く(主翼の前縁から1/3の位置を支えて少し前に傾く)しておけば,エレベーターはニュートラルで自然に着陸します。

真っすぐ滑走しない  プロペラ後流は右回転プロペラの場合,垂直尾翼を機体後ろからみて右に押します。従って機体は左に首を振ります。  特に低速の場合や大きいプロペラの場合顕著です。普通はラダーを右に切って対応します。  ラダーで修正が効かない場合は  ●前輪(または尾輪),主脚の車輪が真っすぐしているか  ●車輪は抵抗なく回転するか  ●サイドスラストが少ないのではないか  ●主翼のねじれはないか  ●ラダーの面積が不足していないか,舵角は十分か  を確認して対応します。  ●滑走し始めるとき(速度0のとき)が最もプロペラ後流の影響を受けます。スロットルを上げてすぐに向きを変えるときはサイドスラスト不足です。  ●脚が剛性不足でも真っすぐ滑走しません。

なかなか離陸しない

 エレベータを大きく引かないと離陸しないときは次の項目を確認します。 ①主翼取り付け角の確認  主翼取り付け角をまず確認します。2°程度あれば十分です。 ②車輪の向き高さの確認  尾輪式であれば最初から主翼の迎え角があるのでエレベータをほとんど引かなくても離陸します。  前輪式の場合は,機体は水平または少し前が上がるように着陸脚の長さを調整します。  前輪式の場合主脚の位置が後すぎると前が重くなかなか離陸できません。  もちろん推力不足ではどうしようもありません。

離陸

↑特に尾輪式は滑走時に迎え角が付いているのでこのままスロットルを上げると離陸します。

 Movie 

↑Y氏の見事な離陸(前輪式)

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↑練習用スチレンボード機の離陸(尾輪式)

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↑離陸速度に達しないのにエレベータを引くと失速します。

前のめりになる  滑走を始めるとき,いきなりパワーをかけると前のめりになることがあります。これは速度がほぼ0なので推力による左回りのモーメント(下図)が大きく,抗力による右回りのモーメントがまだ小さいからです。動き出してから徐々にパワーをかけます。  また,着陸脚が長すぎると前輪の周りの推力線までのモーメントアームが長くなり,左回りのモーメントが大きくなってしまい,前のめり気味でなかなか離陸しません。滑走路のラフが深からといって足を長くするといろいろ不都合が生じます。実機の写真を参考にするかプロペラサイズから検討すればよいと思います。

前のめり
前のめり

↑主脚が長すぎて前のめりになりました。  (Morane-Saulnier L)

真っすぐ飛ぶか  いくら注意深く作っても必ずと言ってもいいくらい機体ごとにくせがあります。ある程度の高度(20~30メートル)で調整します。  左右に曲がるときは送信機のトリムで調整します。バルサは均一ではなく密度は結構異なります。主翼の左右の重さが異なる場合も良くあります。ひどいときは翼端に鉛板(1㎜厚)を両面テープで貼り付けます。まず主翼や尾翼のねじれやラダーの中立を確認する必要があります。送信機で調整します。  一般的にエルロンが効きすぎると回り込んで失速する場合があります。これも好みですが,送信機で調整します。

エレベータがニュートラルで水平飛行するか

 一般的にエレベーターを少し引いて水平飛行するようならば前が重すぎか主翼の取り付け角度不足です。逆は後が重いという事ですがこのときは操縦がしにくくなります。すぐに降ろして調整します。 ラダー機は少し前を重くしないと低速でラダーが効かないことがあります。(着陸時など特に)  エレベータがニュートラルでの水平飛行にあまりこだわらない方が良いと思います。

パワーを上げると頭上げ

 高翼のクラークYは頭上げ傾向が強く出ます。主翼には必ず取り付け角度があるので,パワーのある機体については,ある程度はしかたないと思います。  これを解決するにはダウンスラストを大きくします。(推力線の前を下げます。)  主翼の取り付け角度を大きくした方が滑空性能は良くなります。グライダーでは取り付け角度は大きいままでスラストラインを下げて,それでも足りなければエレベーターダウンで上昇でもよいかもしれません。送信機で軽くスロットルとエレベータのミキシングをしても良いと思います。  パワーが大きすぎると低速でパワーを急激に上げると機体が操縦不能になる場合があります。そのようなときは送信機のトラベルアジャスト(=エンドポイント)でスロットルの上限を下げることができます。バネばかりなどで大まかな静止推力を測定してみることをお勧めします。

ダッチロールとスパイラルダイブ

 ダッチロールとスパイラルダイブについてはこのサイトに示してある図面で作製すれば起こりません。  詳しくは「飛行を安定させるには」のページを参照してください。

飛ばす前と飛ばしたあとの確認

飛ばす前に確認すること

 重心の位置は適正か。  リンケージ(サーボと舵をリンク)関係の強度の確認。接着剤の劣化などでリンケージが外れることもあります。また,サーボの取り付けネジが緩んでいることもあります。  最大電流の測定,発熱が無いかの確認。衝撃などでモーターも劣化します。回転軸の抵抗などが増えると電流が増加します。推力が落ちたときはまずこれを確認する必要があります。  翼のねじれと重量バランス。特に左右のバランス。補修した後など狂うことがあります。錘で対応します。  翼のたわみは無いか。日光に当たって変形することもあります。  モーターの取り付けネジの緩みはないか。振動で緩むことがあります。必ずゆるみ止め処理しておきます。

飛ばしたあとに確認すること

 飛ばした後は着陸時の衝撃で気付かないうちにダメージを受けていることがあります。機体を十分確認します。  バッテリーは残量が70%以上なら必ず充電器のストアモードで放電しておきます。満充電近くで保管すると劣化します。

スティックの操作練習  飛行機は3次元の空間をとびます。スロットル,エルロン,ラダー,エレベーターの4本のスティックの同時操作が必要です。ただし,初めはラダーは使わなくても飛行可能なので実質3つでよいと思います。

Aurora25
Aurora25

滑走練習~スロットル操作  初めに真っすぐ滑走させる練習をします。真っすぐ滑走させられないと離陸させることはできません。  これが割と難しいのです。  プロペラ後流の影響で機種を右に振ります(正回転プロペラのとき)。特に速度が遅いとき,動き始めは大きな影響をうけます。真っすぐ滑走させるためにはラダーで調整します。  車輪の大きさに比べて滑走路のラフが深いときは動き初めに大きな力が必要です。そのような場合,動き始めたらすぐにスロットルを少し下げます。  コツは動き始めにラダーを強めに切り,スピードが乗ってくると徐々にラダーを戻し,等加速度直線運動させます。バランスが良ければ離陸速度になれば機体が浮きます。すぐにスロットルを少し戻します。  前輪式の場合は特にプロペラ後流の影響を大きく受けます。 ラダーサーボはラダーチャンネルに接続し,エルロンチャンネルからラダーにミキシングを100%かけます。滑走練習はラダースティックで,飛行中はエルロンスティックで旋回練習します。

直線上で離陸,着陸

 50mほどの直線上を   滑走 → 離陸(高度50㎝から初めて2~3mの高度まで)→ 着陸  エレベータとスロットルの練習です。  少し風があればエルロン(ラダーをエルロンチャンネルに接続します)の練習になります。  逆向き(対面)も練習します。着陸の練習になります。  スティックの動かす向きをいちいち考えなくても手が勝手に反応するようになればベストです。 エレベーターを引きすぎないように注意します。 着陸時に壊すことが多いので十分練習します。

離陸,着陸

↑上が順方向,下が逆方向です。

離陸

↑慣れるとどの位置からでも操作できるようになります。

 YouTube 

 最初から上手くはいきません。エルロンの操作を忘れています。めげずに練習あるのみ。  機体は「練習用EPS機~超簡単工作」の「翼端上反角」です。

この練習はスロットルとエレベーター,エルロンの同時操作が必要です。簡単なようですが初心者には結構難易度が高いでず。  機体を壊すことが少なくレバーの感覚が養われます。真っ直ぐ飛ばせなければ旋回もできません。 逆方向(向かい合った飛行。対面)の練習は着陸時に必要な技術です。

旋回練習

円運動

 エルロンの感覚を練習します。  高度5m半径10mほどで離陸 → 一周 → 着陸  旋回中は高度を維持するためにスロットルの調整が必要です。  逆回転も練習します。  うまくいくようになったら複数回同じ軌道高度で周回します。  次に半径を変えて練習します。

円運動
円運動

↑手投げ名人「あいらフライトクラブ」Y氏

円運動
円運動

↑管理人。風が無いとき,このくらいの高度で練習しましょう。

旋回中は機体が傾くので揚力が減り高度を失います。ほんの少しエレベーターを引き,スロットルを上げます。 半径を変えて練習すればエレベーターの引き具合,スロットルの上げ具合の感覚が養われます。 エルロンはありませんが,通常エルロンで旋回するのでラダーをエルロンチャンネルに接続します。

8の字飛行

 高度5mを維持して8の字飛行を練習します。  風があっても(1~2m)同じ軌道になるように練習します。  エレベーター,エルロン,スロットルと同時に操作するので忙しくなります。

8の字飛行

 ここまで十分練習したら自由に飛ばせると思います。思い切り高度を上げて滑空したり,思いの軌道を描いたりしましょう。

風のあるとき  なれないうちはせいぜい風速2m/s以下です。また,軽くてゆっくり飛ぶ機体ほど風にながされます。

横風のある時の注意

 横風があると風に流されて旋回時の半径が異なってきます。

8の字飛行

↑右から風が吹くと半径は小さくなります。エルロンが効きすぎるように感じます。

8の字飛行

↑左から風が吹くと半径は大きくなります。エルロンが効きにくいように感じます。

風下と風上での旋回  風下と風上でも旋回が異なります。

8の字飛行

↑風下では風に流されながら旋回します。エルロンが効きにくいように感じます。

8の字飛行

↑風上では風に押し戻されながら旋回します。半径は小さく感じます。

 Movie 
 画面右から左へ風が吹いています。
 風下での旋回は早めに旋回を始めないと旋回中にどんどん流されます。
 風上側は直ぐに旋回が終わります。
 旋回が終わると大きく速度が変化します。

吹きおろしの風  吹きおろしの風がある場合,失速の可能性があります。

8の字飛行

 急に吹きおろしの風に合うとエレベータを引きますが,飛行機の風に対する速度の分速度は小さいので失速してしまうことがあります。(図の水色のベクトル)  パワーをかけながらエレベーターを引きます。あわててエレベーターを引きすぎると迎え角が直ぐに失速角になるので注意。

 風があるときは風上側で飛ばします。風下側で飛ばす時はうっかりすると遠くに行ってしまいます。小さな機体は向きが分からなくなってしまう危険性があります。  また,低速で飛ばすと外乱の影響を受けやすいので少し速めで飛ばします。

練習で壊しましょう

 市販のものは練習用といっても初心者が壊さないで練習できるかというとなかなかそうはいきません。  墜落しても壊れないものは作れないので,構造が簡単でいくらでも修理できるのが理想です。  習用ラダー機はその条件を満たしていると思います。私もこれでだいぶ上達した?と思います。 風の強いときは飛ばすのをやめましょう。練習用ラダー機は軽いので風には弱く,せいぜい風速1~2m/s以下です。  慣れてくると多少の風でもコントロールできるようになります。風に正対してスロットルを絞り,高度を維持してホバリングすることもできます。風の感覚を覚えることも大切ですが十分練習してからです。 わざわざ遠くまで来たのに風が…… 良くあることです。  日曜日だけで考えて,雨も降らず風も弱い飛ばせる日は月に2回あれば良い方です。

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